実務経験に関する審査要領

(総則)

第1条 地域調査士認定規程(以下「規程」という。)第4条第2項の実務経験及び地域調査士認定規程細則(以下「細則」という。)第2条第1号の実務経験(以下「実務経験」という。)に関する審査は、規程及び細則に定めるところによるほか、この要領に基づいて行うものとする。

2 この規程において規定する事項に該当するもの又は該当する場合の例及び該当しないもの又は該当しない場合の例は、各条又は各項の末尾に、それぞれ○印又は×印の後に示す。

3 この要領において明示されていない事例に係る審査は、この要領に明示されている事例を参考にして行うものとする。

(基本原則)

第2条 実務経験とは、報酬を得て行うか否かを問わず、企業、官公庁、学校その他の組織に勤務する者が職務として行う業務、又は個人が他人の求めに応じ、若しくは不特定多数の者の利益を図るため、政策の実現、行事の開催、報告書の作成その他何らかの成果の完成を目的として行う業務であって、地域調査に関するもの(以下「地域調査業務」という。)に従事した経験とする。地域調査に関する活動であっても、自己の趣味、レクリエーション、学習等のために行うもの又は学生が学業の一環として行うものは、地域調査業務と見なさない。

【地域調査業務となり得る業務の例】

○ 企業の社員が職務として行う業務 官公庁の職員が行う公務 NPO法人の会員がその法人の仕事として行う業務 個人が官公庁等から受注して行う業務 個人が企業の下請けとして行う業務

× 趣味として行う旅行やまち歩き カルチャースクール等の講座の受講 大学院の学生が修士論文や博士論文の作成のために行う調査研究

2 地域調査に関する業務であるか否かの判断は、規程第2条第1項の規定を基本として行うものとする。

3 所定の期間を満たすか否かの判断は、地域調査業務に専ら従事したと見なせる期間(以下「地域調査業務専念期間」という。)を通算した期間が所定の期間に達するか否かをもって行う。地域調査業務とその他の業務とを併せて行った期間がある場合は、地域調査業務が全体の業務の中で占める割合(以下「従事割合」という。)をその期間に乗じた値をもって地域調査業務専念期間とする。

(国等における地域調査業務)

第3条 国又は地方公共団体等において職員が公務として行う国土計画、地方計画、都市計画等に関する政策の企画立案及び実施に関する業務、環境計画、環境影響評価等に関する政策の企画立案及び実施に関する業務、地理教育に関する政策の企画立案及び実施に関する業務、地域の自然的、人文的、社会的な特性に関する調査研究に関する業務、地図若しくは海図又は地域統計の整備に関する業務その他これらに類する業務は、地域調査業務と見なす。これらの業務を所掌する部署に勤務する職員が行う業務であっても、これらの業務と直接関係のない業務又はこれらの業務の支援に止まる業務は、地域調査業務と見なさない。

【地域調査業務と見なせる業務の例】

○ 国土交通省において行う国土利用計画の策定 国土交通省又は地方公共団体において行う都市計画の策定 環境省において行う自然環境基本計画の策定 産業技術総合研究所において行う地質図の作成 海上保安庁において行う海図の作成 国土地理院において行う地形図の作成及び地理調査

× 予算、決算、会計、人事、労務等に関する事務


(シンクタンク、建設コンサルタント等における地域調査業務)

第4条 受託又は請負により地域の特性の調査、分析等を行うことを業とする企業において社員が職務として、又は企業に属さない個人が職業として行う地域の経済調査、環境調査、生態系調査、地質調査、地図若しくは海図の作成その他これらに類する業務は、地域調査業務と見なす。これらの業務と関連する業務であっても、データの整理、測定、試料の分析等に特化し、地域の総合的な理解を必要としない業務又は補助的な業務は、地域調査業務と見なさない。

【地域調査業務と見なせる業務の例】

○ 人口の分布に関する調査 工場、商店等の分布に関する調査 土地利用調査 植生調査 動物の分布に関する調査 広域的な水質調査 地形図の作成 土地条件図等の主題図の作成 海図の作成 地質図の作成 ハザードマップの作成 総合的な環境アセスメント

× ボーリング調査(地域的な広がりを持たないもの) 土質分析(同) 水質分析(同)基準点測量 測量助手として行う業務

(地域振興を目的とするNPO法人等における地域調査業務)

第5条 地域の活性化、まちづくり等に資することを目的として設立されたNPO法人等において、構成員がその活動の一環として行う地域の実態調査、まちづくり計画案の策定、地域の特色の広報、地域の特性を活かしたイベントの開催等は、地域調査業務と見なす。これらの業務を行う法人等において行う業務であっても、単なる物品の斡旋及び販売、施設や機材の貸し出しその他地域の総合的な理解を必要としない業務は、地域調査業務と見なさない。

【地域調査業務と見なせる業務の例】

○ 地域の実態に関する調査報告書の作成 まちづくりの提案書の作成 地域の特色を宣伝するためのイベントの開催 まちづくりの実践に関する講習会の開催 地域の活性化をテーマとしたシンポジウムの開催

× 公共施設の保安、清掃等の請負業務 予算、決算、会計に関する事務

(出版社、マスコミ等における地域調査業務)

第6条 書籍の出版、雑誌の出版、新聞の発行、放送等を行うことを業とする企業において社員が職務として、又は企業に属さない個人が職業として行う著述、取材、編集、報道等の業務のうち、地域に密着して行うもの又は地域の特性に着目して行うものは、地域調査業務と見なす。これらの業務と関連する業務であっても、データの整理、機器の操作等に特化し、地域の総合的な理解を必要としない業務又は補助的な業務は、地域調査業務と見なさない。

【地域調査業務と見なせる業務の例】

○ 地理学に関する専門的な書籍の著述 地誌に関する書籍の著述、地域の実態や特性に関する報道 雑誌若しくは新聞の特集記事又はテレビ若しくはラジオの番組において特定の地域を取り上げたものの企画、取材、編集、執筆、報道

× 通常の娯楽番組の制作 アシスタントディレクターとしてディレクターの指示の下に行う業務

(学校における地域調査業務)

第7条 大学又は大学院において、教員が校務として行う地理学又はその隣接科学の教育研究に関する業務は、地域調査業務と見なす。大学又は大学院の教員が行う業務であっても、授業で使用する機材の準備その他の補助的な業務及び教育研究と直接関係のない業務並びに大学以外の学校における通常の授業等の業務は、地域調査業務と見なさない。ただし、特に地域の特性の理解を促すための授業や課外活動に関する業務は、地域調査業務と見なす。なお、名誉教授、客員教授等の称号を有する者であっても、実質的な勤務の実態がない者については、地域調査業務に従事する者と見なさない。

【地域調査業務と見なせる業務の例】

○ 大学又は大学院の教授、准教授、専任講師、助教等が行う教育研究 小学校、中学校、高等学校等における地理クラブ等の指導 児童生徒地図作品展に関する運営、審査、指導等

× 中学校、高等学校等における通常の地理の授業 図書の管理

(地域調査業務専念期間の算定の方法)

第8条 地域調査業務専念期間は、毎暦年又は毎年度(4月1日に始まり3月31日に終わる年度とする。以下同じ。)ごとに算定し、それらを合計したものとする。

2 毎暦年又は毎年度の地域調査業務専念期間は、1年を超えないものとする。

(従事割合の算定の原則)

第9条 従事割合は、企業等に常勤の社員等として勤務し、専ら地域調査業務に従事する者については1とし、非常勤の社員、個人事業主等として、又は副業として地域調査業務に従事する者にあっては、これとの比較において職務及び勤務の実態を勘案し、算定する。

2 企業等に非常勤の社員等として勤務し、その勤務の間は専ら地域調査業務に従事する者の従事割合は、1週間のうちの勤務日数に0.2を乗じた値とする。

3 従事割合は、1を超えないものとする。

(地域調査業務以外の業務を兼務する者の従事割合)

第10条 官公庁において、地域調査業務を行うほか、これと併せて法律、条例等の立案、予算、決算、人事等の事務に従事する職員の従事割合は、考慮すべき特別の事情がない限り、0.5とする。

2 官公庁、企業等において、部長、課長等の管理職として地域調査業務を行うほか、これと併せて予算、決算、人事等の事務に従事する者の従事割合は、考慮すべき特別の事情がない限り、0.5とする。

3 マスコミ等において、記者、デスク、ディレクター等として、地域調査業務を含めて各種の報道、制作等に従事する者の従事割合は、考慮すべき特別の事情がない限り、0.5とする。

4 大学又は大学院において、専任の教授又は准教授として勤務する者の従事割合は、1とする。ただし、学長、学部長等の管理職就任、留学、サバティカルその他特別の事情がある者の従事割合は、その実態に応じ、1未満とする。

5 大学又は大学院において、専任講師又は授業を単独で行うことができる専任の助教として勤務する者の従事割合は、考慮すべき特別の事情がない限り、0.6とする。

6 大学又は大学院において、助手等前2項に規定する者以外の専任の教員として勤務する者の従事割合は、考慮すべき特別の事情がない限り、0.5とする。

7 個人事業主として地域調査業務を行う者の従事割合は、毎暦年又は毎年度ごとに、地域調査業務に従事した期間を分子とし、地域調査業務に従事した期間と地域調査業務以外の業務(事業の継続のために必要な経理、営業等の業務を含む。)に従事した期間とを合計した期間を分母として算出した値とする。

(非常勤講師の地域調査業務専念期間)

第11条 大学又は大学院において、非常勤の講師として授業を担当する者の地域調査業務専念期間は、考慮すべき特別の事情がない限り、担当した授業の単位数に0.05を乗じて得た値の年数とする。

附則 この要領は、2010年9月6日から施行する。
(2010年9月6日 地域調査士認定委員会承認)